水辺にて/会計の世界
二本立て日記です。
#映画の水上バラックのシーンの話
水上バラックのシーンが大好き。みんな好きか。例にもれず大好きです。
あの淡い色の世界と、寄る辺のなさ。
城砦のシーンは割とコントラストが強くて建物の構造上閉塞的な印象があり、やがてそれが人々の営みの濃さと包み込まれているような感覚になってくるのに比べ、あのシーンのひらけた空間の心もとなさや、白と灰色の世界のコントラストが美しいです。
香港でもそういうイメージでいいのかわからないけど、彼岸だな、と思う。
洛軍とのハグシーンに、それぞれの抱いている想いが詰まりまくっていてたまらない。
十二少の健やかさに救われる。一緒にいてくれてよかった。きっと虎兄貴があえて一緒にいさせてくれたんだろうな。十二少ひとりだったら、いくらでも匿う方法があったはず。
信一と拳を合わせて、その喪失に初めて気づいてハッとする洛軍の表情にいつも胸が痛くなる。
全員があんなにも大きな喪失を抱えて、それでも生きていく苦しさとさみしさ。でも希望でもあるのだ、彼らが生きていることがすでに希望なのだ、と思いたくなるような美しいシーンだと思っています。「生き延びろ」と言った龍捲風の言葉が、彼らの内に優しく響いていてほしい。
それにしても、水上バラックにいる信一、それまでより儚く見える。薄い……。あ、これは物理的に。着こんでいないからかなあ。シャツを着てると胸板厚く見えるんですけど、あそこのシーンの信一は華奢で心配になる。ご飯食べてなさそうだし、眠れてなさそう。龍捲風が心配するよ……。
余談ですが、初回に見たとき、虎兄貴が「いままでの3人とは違う。覚悟しとけ」なんていうから、「ヤク漬けにされて廃人になってるんじゃ……!?」と一瞬身構えた。そこまでヤバいことになってなくてよかった。
#戦う会計お兄さんの話
飯屋の帳場で帳簿つけてる信一のこと、映画見てるときは「明朗会計お兄さん」くらいに思ってて、事務仕事してるのギャップがあっていいな〜!と思っていたのに、原作で少し詳しく書かれていた内容にウッとなっている、という話。(Xに書いてた与太話をサイトにお引越ししてきました)
『信一傳』がいかにヤングアダルト小説として素晴らしいかの話を、いつかしたい。
なお、会計お兄さんにウッとなりすぎて積読にしてた『帳簿の世界史』を読み始めている。
意味が分からな過ぎて自分でも面白い。
原作ンヤッの会計お兄さん事情(折りたたみ)
原作で龍捲風存命中の信一は「龍城幇の掌櫃(金庫番)」というポジションにある。
どんな役職かというと、原作(圍城)の中で言及されたものを列挙するだけで、
【掌櫃】
・金銭を管理する重要な立場
・帮会(=組)の全ての収入(麻薬の売買、警察への賄賂、売春の売上 などを含む)の帳簿をチェックする人
・龍頭(ボス=この場合、龍捲風のこと)が帮会の金銭を動かす際も掌櫃の同意が必要
爪先から頭のてっぺんまで黒社会の香りがする!
組織内重要ポジションで、龍捲風に直接意見できる立場じゃないですか〜…。こわ…。めちゃいい……。
お金の流れがわかってるって、つまりはヤバいやつ含めた情報が集まってくる人ってことなわけで。表の帳簿も裏の帳簿もしっかり把握しているわけで……。想像以上に裏社会の組織の中枢ど真ん中にいてびっくりしました。
No.2を自認しているならそりゃそうだろうと言われたらそうなんですけど。
映画ンヤッがあまりにも朗らかなので……。
そもそも、原作ンヤッは組織における会計の重要性に20歳かそこらで気付いているというキャラとして描かれてるんですよね。18歳で自ら夜学に通い(※信一は高校を中退している←龍捲風の怒りを押し切って勝手に辞めた)商科を勉強しながら、組織の帳簿を手伝う2年の間に裏表のお金の流れや問題点を把握して、「信一總算有對『龍城幫』的營運了解清楚(信一は『龍城幇』の運営をついにはっきりと理解した)」と描写されている。
このへん、龍捲風が”数字見るだけで頭痛い人”なのと対比になっていて、原作ンヤッは龍捲風とは別の能力を持つリーダー像を自分の手で見つけ出している。自分の得意武器を選び取るところとあわせて、父親超えを非常に丁寧に描いているところだと、私は感じてます。やっぱり『信一傳』は最高の黒社会ジュブナイル小説。
映画ンヤッの描かれ方は、またちょっと違う感じ。
映画ンヤッは「兄貴の役に立ちたい!確定申告(※ない)は俺に任せろー!ワンワン!」という感じに見てます。白黒ボーダーコリー。かわいいね。
同じ「カラオケ店やろ~!」でも原作ンヤッは龍城幫を潤わせるための新しいシノギだけど(しかも儲かりそう。商才◎)、映画ンヤッは楽しそうだからやりたい兄貴と一緒にやれるならなんでも!みたいな印象がある。
どっちも良い!
原作と映画はそもそもキャラがだいぶ違うので(信一と龍捲風はまだ近い方だけど、洛軍はなにもかも違うに近い)いいとこ取りして楽しんでます。